感想文を書いてみよう⑨~ルドルフとイッパイアッテナ~
今日は、若い友人(11歳)からおススメしてもらった、ルドルフとイッパイアッテナの感想を書きます。
私は今回はじめて知り、まず最初に劇場アニメ版を観たのですが、もともとは斉藤洋さんによる作品で、
1987年に講談社から出版されたそうです。結構歴史があったのですね。
世の中には、沢山刺激の強い作品があって、それはそれで、濃い目のコーヒーのようにじっくり味わって鑑賞したいものですが、
刺激に頼らなくても、こんなに素敵な気持ちになれる作品を、私はひさしぶりに観ました。
それでは、ご紹介していきますね。
感想文を書いてみよう⑨~ルドルフとイッパイアッテナ~
もくじ
- おもな登場人物
- あらすじ
- 観て(読んで)みた感想
おもな登場人物
①ルドルフ
主人公の小さな黒猫。飼い主のリエちゃんの後を追って家の外に出るが、うっかりトラックの荷台に入ってしまって、そのまま東京に運ばれる。
②イッパイアッテナ
ルドルフが東京に来て初めて出会った猫。イッパイアッテナの名前は、彼のせりふからルドルフが勘違いしたことによる。人間の文字を読み書きできる。近所の猫には、恐れられ、一目おかれる存在。
③ブッチー
イッパイアッテナと一緒に暮らしているルドルフに、興味をもって探っているうちに仲良くなった。情報通でおしゃべり好き。
④デビル
かつてイッパイアッテナが飼い主と一緒に住んでいた家の隣の家のブルドッグ。猫たちを見下した態度をとっている。
⑤クマ先生
本を読むために学校に来たルドルフ達の力になってくれる。
あらすじ
ルドルフは小さな黒猫で、飼い主のリエちゃんが大好き。
ある時、お使いに出たリエちゃんを追いかけて外に出てしまう。
街中のいつもと違う環境にとまどいながらも魚屋でししゃもをせしめたルドルフ。
しかし、魚屋のおじさんに追いかけられ、トラックの荷台に乗り込んでしまう。
その時、魚屋のおじさんに後ろから投げられたデッキブラシが頭に命中、
ルドルフは気を失ってしまい、そのままトラックに東京まで運ばれる。
そこで出会った大きなしま猫。縄張りに入って来たよそものと見てルドルフに挑戦してくるが、ルドルフの物怖じしない態度が気に入り、ルドルフのししゃもをもらった代わりにたくさん「ご馳走」してくれる。
色々な人間と仲良く付き合い、どこでも歓迎されて、おいしいものをもらったりできるこの不思議な猫は、行く先々でそれぞれの呼び名で呼ばれていた。
ルドルフに名前を聞かれた時、ちょっと考えて「俺の名前はいっぱいあってな、」と切り出したところを、ルドルフが勘違いし、それ以来ずっとルドルフはこの大きなしま猫を「イッパイアッテナ」と呼ぶ。
イッパイアッテナはかつて飼い猫だったのだが、飼い主がアメリカに行く事になり、手放されて野良猫になった。飼い主は、アメリカに行く前に、イッパイアッテナが生き残れるように、文字を覚えさせる。
好きではない勉強だったが、のちに文字が読めるおかげでさまざまな知識を身につけ、今では文字を読み書きできる事を誇りに思っている。
ルドルフは、故郷に帰る手がかりを得るために、イッパイアッテナから文字を学ぶことにする。
苦労の末に読み書きができるようになったルドルフは、故郷が岐阜であることを知る。友人ブッチーの協力もあり、ルドルフは岐阜行きのツアーバスに乗るチャンスを手に入れた。
しかし、最後にルドルフに良いものを食べさせてあげたいと思ったイッパイアッテナが、ブルドッグのデビルとの食べ物の交渉中に傷つけられてしまう。
猫たちを見下す態度のデビルにはルドルフも思う所があったが、今回、頼れる仲間としていつも一緒にいたイッパイアッテナの痛々しい姿を見て、ルドルフはある決意をする。
岐阜行きのツアーバスに乗ることはあきらめ、デビルに立ち向かったルドルフ。苦しい戦いだったが、ブッチーの助けも借りて、自分の何十倍もあるようなデビルを追い詰める。
そして、デビルは、猫たちに危害を加えない事を約束した。実は、デビルはイッパイアッテナがうらやましかったのだ。彼は猫たちと友人として付き合っていく道を選んだ。
イッパイアッテナは、ルドルフがなんとか岐阜に帰れないかと模索する。そして、ブッチーの飼い主の店で、岐阜方面に行くトラックが出ている事を発見。
ただ、方向が一緒でも、行く先は別なので、ルドルフは岐阜につくまでに何度か車を乗り継がなければならない。
そのために、ルドルフ達は猛勉強して周辺の地理やインターチェンジの名前を覚えた。
そしてある日、ついにルドルフは念願かなって故郷のリエちゃんの家に帰る事ができたのだ。
しかし、ルドルフが家を後にしてから、すでに一年以上の月日が経っていた。リエちゃんの家には、ルドルフと良く似た子猫が新しく家族に迎えられていた。
ルドルフは全てを理解し、リエちゃんの家を後にする。そして、向かう先は、もちろん、
イッパイアッテナとたくさんの仲間のいる東京。
イッパイアッテナは、もとの飼い主を探してアメリカに行こうとしていたのだが、そんな所に突然飼い主が戻ってくる。そんな事があって、イッパイアッテナはもとの飼い主の所に戻った。
でも、いつでも誰のところにいても、ルドルフにとってのイッパイアッテナは少しもかわらない。今や、ルドルフも一緒に飼い猫として同じ家に暮らすようになり、
ブッチーや、そのガールフレンドのミーシャ、デビルもいっしょに楽しいパーティーが開かれ、東京の夜が更けていく。
観て(読んで)みた感想
冒頭から、子猫のルドルフがかわいくて、そして、画面をただよう花びらから、ふんわりと暖かい季節感が伝わってきました。
一番すてきな季節、春、桜のシーズンから、物語は始まり、季節はうつろいながら、子猫だったルドルフもちょっとだけ大きくなって、そして体の大きさよりももっとずっと心が成長して、
ついにはもとの飼い主のリエちゃんのもとに、戻ってくるんです。
行きは、気絶しているうちに自動的に運ばれてしまった訳ですが、帰りはトラックを乗り継いで帰るんです。
凄いことですよね。それがなぜできたかというと、ルドルフが、イッパイアッテナから文字を学び、友人達からもたくさんのことを学んだからです。
学習の大切さが一つのテーマになっていると思うのですが、それがメインだったら、ちょっとお説教くさくなってしまう。ジュニア世代がこの作品を観たいと思う要素は、多分他にあると思います。
まず、猫達の描写が魅力的なこと。これは絶対条件でしょう。ルドルフはほんとうに、こんな子猫がうちにいたらなと思うような愛らしいキャラクタですし、
イッパイアッテナは、でぶっちょで、トラを思わせる縞模様がきれいで、貫禄も十分です。
ブッチーは、挙動不審で見るからに怪しいやつ、かと思えば、恋に一途な所もあったり、ルドルフに情報を教えてくれたりする。
イッパイアッテナもブッチーも、途中で出てくるおばあさんも、登場シーンでは悪そうだけど、実は違った、という展開が多く、その意外性もいいと思います。
そもそも全体通してこの作品は、悪人が一人も出てこないのですが、そこも、好きになるポイントかなと思います。やっぱり、勇気を出して頑張ったら、みんなと仲良くできるし、
みんなで知恵を出し合って協力したら、どんな難しい問題も解決できるという、未来への希望を持てる事が一番ですよね。
その経験があるから、この先救いようのない場面に出くわしても、先に進む力を発揮できるんじゃないかなと思います。
児童文学作品は、多分、大人がいちばん率先して観ておくべきなのではないかなと思います。
それを観て未来の大人が育つのですから。
昔と今で、面白いとされるものも変わってきていると思います。
だから、今回、この作品を実際にいちばん楽しく観られる世代のひとに教えてもらえたのはラッキーでした。
ただ、本については問題なく大人も入っていけると思いますが、映像作品の場合は、好みの速さにして観るなどの工夫も必要かなと思います。
そんなちょっとした工夫をすれば、今まで気づかなかった、あるいは忘れていた感覚で、ルドルフ達と一緒にわくわくして冒険を楽しむ事ができます。
私はこの作品で、子どもの頃の感覚を取り戻すちょっとしたコツをつかんだ気がします。
これを機に、児童文学作品にも注目していきたいと思います。